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Starting a new story (2010-2014 )

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Statement

ある日、隣町に奇妙な形の廃棄物工場を見つけて興味を覚え、撮影を始めた。この町には雑木林や畑の中に工場や倉庫が数多くあった。狭い道路を大型車が砂煙を上げてひっきりなしに走っていたが、人の気配は少なく、私は不思議と安らぎを覚えた。

この町を撮影し始めたのは、ちょうど両親の介護に追われている時だった。老いは誰にでも訪れるものだが、親の報われない最後に虚しさを感じていた。

撮影し始めてしばらくして父が亡くなった。 痩せて、枯れ葉がカサカサと落ちてゆくような最後だった。

あの奇妙な古びた工場が キシキシと音を立てて稼働する姿が、働き尽くして朽ちていく父の姿に重なった。そして、父の最後の日々、十分に手を尽くせなかった自分を深く後悔した。私は老いや死という絶対的なものを受け入れられず、父と共に歩むことができなかったのだ。

この町には日々、さまざまなものが運び込まれ、うず高く積み上げられていく。 それらはいつか工場で処理されて新しい何かに生まれ変わりこの町を出ていく。 役目を終えたものも、また別な形の”生”(または、役目)を与えられる。人もまた同じなのかもしれない。どのような人 生であろうが、皆一様に死を迎え、土に還り、循環し、全体に同化して、やがて別の何かになる。 死というプロセスを経て違う形を生きる。父の肉体も魂もまた、新しい何かに生まれ変わるだろう。普遍の現実に尻込みした私もまた、同じこのダイナミックな流れに乗ってゆくのだ。

重く垂れ込めた雲の下や生い茂る草むらの向こうに、広がる空が見えた。

薄くたなびく光のその先にどこまででも変化し続く世界が見えた。

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Paper : Canson  RAG PHOTOGRAPHIQUE
Print : Inkjet print

 

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